挿入歌考:第1回「おいらは淋しいスペースマン」

 NHKで放映されたアニメ「キャプテンフューチャー」の挿入歌であるこの歌は、私が挿入歌を語るに当たって、まず絶対に外せない歌と言っていい。なぜなら記憶にある限りで、私が「挿入歌」というものを意識した、初めての歌だからである。

 アニメ「キャプテンフューチャー」は、同名のスペース・オペラ小説(原作:エドモンド・ハミルトン、野田昌宏の訳でハヤカワSF文庫から出版されていた)を原作にしたアニメである。
 この作品、アニメとしての一般的評価は決して高いものではなかったようである。一方、原作のファンからも、主人公カーティス・ニュートンことキャプテンフューチャーが駆る愛機(もちろん宇宙船)「コメット号」のデザインが、原作の涙滴型とは似ても似つかぬディスカバリー号(当時流行った映画『2001年宇宙の旅』に登場)にそっくりなデザインであるなどの理由で、あまり良い印象を持たなかった人もいたようである。
 だが、そもそも原作を読んだことのなかった当時中学生の私にとって、このアニメが原作との出会いを生んだのは事実であり、またそれがなければその後の大学での交友関係、ひいては現在の大きな趣味のひとつであるTRPGと、それを趣味とする同好の士たちとの出会いもまたなかったことを考えると、この作品が私の人生に与えた影響(良かれ悪しかれを問わず)の大きさたるや、こうして書いている私自身、戦慄を禁じ得ないほどと言って良い。

 さて、脇道はさておき、歌である。

おいらは淋しい スペースマン
ひとりぼっちの スペースマン
故郷と呼べる 星もなく
おれを待ってる 家もない
星という星 月という月
ひとつ残らず 住んではみたが
やっぱりおれの 好きなのは
星から星への ひとり旅


「おいらは淋しいスペースマン」
(アニメ「キャプテンフューチャー」より)
 作詞:野田昌宏
 作・編曲:大野雄二
 歌:ヒデ夕樹


 ひとつところに落ち着いて住もうにも、内なる冒険心がそれを許さず、結局は宇宙を旅するのが一番性に合っている。そんな孤独なスペースマン(宇宙船乗り)の心境を歌った、哀愁に満ちるこの歌詞は、原作(正確にはその日本語訳版)が初出である。
 自らも宇宙とSFとスペオペを愛してやまぬ翻訳者であり小説家の「宇宙軍大元帥」こと野田昌宏氏によるこの素晴らしい歌詞に、大野雄二による曲が添えられて、この曲は完璧なものになったと言って良い。今ほど完成されたシンセサイザのない時代に、電子音楽とハモニカなど実際の楽器とを組み合わせて織りなされたアレンジが、より一層の魅力を醸し出している。

 歌っているヒデ夕樹氏は「海のトリトン」(当初のタイトルは『GO!GO!トリトン』)や「スターウルフ」「イナズマンF」「スパイダーマン(東映版)」など、数多くのアニメ・特撮の主題歌を歌っておられた方だが、惜しくも早世された。
 余談になるが、「キャプテンフューチャー」の主題歌「夢の舟乗り」も当初ヒデ夕樹氏が歌っていた。ところが、番組中盤以降、当時人気だったグループ「ゴダイゴ」のボーカル、タケカワユキヒデ氏に差し替えられてしまい、個人的には非常にがっかりしたのを覚えている。ヒデ夕樹氏のキレの良い歌い方の方が、タケカワ氏のまったりとした歌い方より良かったと思っているのは、決して私だけではないと思う。

 さて、本題に戻る。
 スペースマンの哀愁を歌うこの歌は、宇宙で犠牲になった昔の英雄にキャプテンが想いをはせるシーンなど、主として悲哀感の漂う場面等でたびたび流れた。だが、個人的になぜか一番印象に残っているのは、原曲そのものが流れたシーンではない。

 記憶が定かではないが、確か1時間スペシャルで放映された「華麗なる太陽系レース」(原作タイトル「謎の宇宙船強奪団」)の1シーンであったと思う。(類似のシーンが原作にもあるが、アニメと同じではなかったと思う)

 キャプテンから探索を命じられたロボットのグラッグとアンドロイドのオットーが、コメット号で目的地へ向かう途中のこと。(この二人、本心は相手のためなら命さえ厭わないのだが、それを素直に表現しようとせず、暇さえあれば喧嘩ばかりしている、というのがこのシリーズのお約束である)
 操縦桿を握ったグラッグが、持ち前の胴間声を張り上げて、この「おいらは淋しいスペースマン」を歌うのである。
 聞かされるオットーは耳をふさぎ、オットーのペットのオーク(原作ではオオグ)も目を回す。素知らぬ顔をしているのは、真空中で暮らしているので音を聞かずテレパシーでコミュニケーションするグラッグのペットのイイクだけ。
 ひとしきり歌い上げたところにオットーが食ってかかり、二人はお約束の喧嘩へ突入していくのだが、グラッグがこの歌をやたらと気持ちよさそうに歌っていたのが、妙に強い印象を残した。

 グラッグを演じた声優の緒方賢一氏は、決して透明感のある声質ではないが、それでも本来はもっと歌のうまい方だろう(後に、同じくNHK放映のSFアニメ「宇宙船サジタリウス」で、ミュージカルばりのシーンを演じられたことがそれを証明している)。それが、グラッグというキャラクターを演じるに当たって、かくも見事に歌のイメージを(良い意味で)ぶちこわしてくれた。さすがはプロだと思う。

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この記事へのコメント

ドロシー
2005年02月23日 01:37
キャプテンフューチャーとは懐かしいですね。でもアニメは見てないんです。野田さんの訳した文庫本だけは読んでいて、絵がこんなに古くさいのにおもしろいなぁとむさぼるように読んだ記憶があります。あの世界まだ宇宙にエーテルが満ちてましたよね、確か。あのころ親にTVのアニメを禁じられていたので、だいぶ見られなかった作品があるんです。キャプテンフューチャー見てみたいけど、ビデオとかでてるんでしょうか?
Radcliffe
2005年02月23日 01:53
コメントどうも(^_^)>ドロシーさん
いや、あまりに古い話題なので、読んでくださる方がいるかちょっと不安だったのですが(笑)
ビデオの件ですが、残念ながら販売されているという話は聞いたことがないです。DVDが発売されれば私は絶対全話買うのですが……
数年前に「BSアニメ劇場」で放送された際には録画した(VHSの3倍ですが)のですが、いくつかタイマーセットを忘れて録り逃がした回があって悔しいんです。上で紹介した1時間スペシャルはまったく別の時間枠(春休みスペシャルか何か)でこっそり放映されてたとかで、知ったときには後の祭りだったし……
2010年09月11日 00:22
初めまして、HINAKAと申します。

突然で、大変失礼とは存じますが、先日(2010年9月6日頃から)全国のUHF系で深夜放映されましたTVアニメ『あそびにいくヨ!』の第9話において、こちらで御紹介のNHK・TVアニメ「キャプテンフュチャー」の挿入歌が、非常に重要な扱いを受けておりました。
この内容に関して、個人的にかなり深読みをした見解を、拙ブログの記事にするべく歌詞を差がしておりましたところ、こちらの記事の存在を知りました。記事そのものの内容もさる事ながら、この歌に関する思い入れの強さには感じ入るものがあります。

その上で誠に身勝手な事ながら、本来は著作権者様に求めることが必要なのですが、まずそのものを引用させていただきたく、こちらの「おいらは淋しいスペースマン」の歌詞を拙ブログ記事に使用させていただく事をお許しいただきたく、お願い申し上げる次第です。
なお、引用元は明記させていただきますが、御要望が有れば削除いたします。またこれも残念ながら、引用そのものも御承諾いただけない時には、お知らせを確認いたしました時点で、いつでも引用全文を削除させていただきます。

勝手な事を、突然お願いして恐縮ではありますが、御理解いただければ幸いです。
なお、記事そのものが完成いたしましたら、すぐにでもトラック・バックさせていただきます。
その他の記事も、個人的に大変興味を惹かれますので、後日ゆっくりと拝見させていただきたいと、思っております。

今回は御無礼ながら、突然のお願いと御挨拶で、お許し下さい。

2010年09月11日 00:40
>HINAKAさま
はじめまして。コメントありがとうございます。
また、実にご丁寧なご依頼、痛み入ります。
本来、歌詞の著作権者は別にあるものであり、私が許可をするという筋合いのものでもありませんが(^_^;)、もしそちらの記事を書かれる上で参考になるのであれば、どうぞご利用下さい。
トラックバックについてはSPAM避けのため承認制にしていますが、確認の上問題ないTBは速やかに掲載するようにしていますので、掲載までの多少のタイムラグはご容赦下さい。

私も、そちらの記事を楽しみにさせていただきます。
2010年10月16日 19:39
今日,あそびにいくヨ! 第9話を見たので関連でリンクさせていただいてトラックバックさせていただきました。
よろしくどうぞ。
ちょっとウルっとしてしまいました(笑)
涙腺が緩くなったようです。
2010年10月16日 20:13
>Kyanさん
TBとコメントありがとうございました。
こうした過去の名曲が、別の形で掘り起こされて紹介されるのは、原曲を愛する者として嬉しいことです。
コーネル
2018年12月09日 14:41
私もこの曲が好きで良く聞いています。
私はキャプテンフューチャーの原作から入ったのですが、話題にでていないので少し書かせて頂きます。
歌詞にあるスペースマンですが、原作においては宇宙飛行士の意味ではありません。原作では各惑星に人が住んでいる設定で地球人、火星人などの惑星の部分を宇宙に変えた、宇宙人の意味です。
係累の無いカーティスが、所属する惑星や衛星の無い自分を卑下して作った
悲しい単語がスペースマン。
これを念頭において聞くとこの曲、さらにもの悲しさが増しますね。

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