ブロ愚 〜おろか日記 blog style〜

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS Q&Aコーナー(^_^;)(コメントへのレス追記)

<<   作成日時 : 2007/01/27 22:46   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 29

友人のthalionやでびぃから、おそらく一般の皆さんも抱くであろうと思われる疑問がコメントで呈されたので、それに対して私の答えられる範囲で答えたいと思います。

ちょっと待って……?(追記あり)
thalionのコメントより:
素人からみると、一番気になるのは、手続きがどうとかいう問題じゃなくて

「強度が足りてんのかどうか」

この一点だと思うんだよね。で、その基準となる尺度が、お役所と設計者とで違ってたってことが問題なんじゃないかと。

それって業界・役所で統一化を図ることってできないのかなぁ

その疑問に対する答えのひとつが、先に書いた「アパホテル関連:新たな情報あり」に書いてあります。
前の記事でも書いた通り、荷重一つ取ってみても、それに対する考え方はいろんな場合があるため、「目安」を示すことはできても「これでやれ!」とは言えないってところがあるんです。

もうひとつの問題は、下のでびぃに対する答えと一緒に書きます。



書き方によって印象が変わる……(追記あり)
でびぃのコメントより:
計算ソフトが対応できないようなケースとかあるのかなぁ
こういうときをこのソフトは想定外で変な結果になるとか
・・・あってもおかしくないとは思うけど、それを注釈しないくらい茶飯事にやってることかな(偽装無罪、手続き微罪)

それよりありそうな話は本当は「あかん」のやけどなんとか安全マージンのうちだしあとはオトナノ事情とやらでなんとか押し通したってことやけどね(有罪)

「計算プログラムの適用範囲に合致しているか否か」というのは、もちろんあります。
それを確認するために、計算書にはプログラムチェックリストを付けることになっていて、チェックがすべてOKであれば基本的には「問題なし」とされます。

では、そのチェックリストで適用範囲に合致していない場合、プログラムが使えないかというと、そういうわけでもないんです。

適用範囲に外れている部分について、別途に手計算などで補足の処理を行って、問題ないことを確認してあれば、それでOKとなるわけです。

適用範囲から外れる代表的な項目として、一番簡単なのは「計算結果として出てきた、柱や梁などに作用すると考えられる力の数値(以下「設計用応力度」と呼びます)が、それぞれの柱や梁が実際に許容することのできる力の数値(これを「許容応力度」と呼びます)よりも大きいという結果が出た」場合というのがあります。

この場合も、設計用応力度をプログラムとは別に手計算などで算出し、許容応力度以下であることを確認すれば、それで良いわけです。

「でもコンピュータのプログラムで出た答えなんでしょ? 手計算と違うことってあるの?」

当然、そういう疑問が出てくると思います。

あるんです。

それはどちらかが間違えているわけではなく、考え方が違うからなんです。
もう少し平たく言えば、「答えを導き出すための式の立て方が違うから」とも言えるでしょう。

建築物の構造解析を行う上で、私たち構造設計者は建築物の様々な要素を、ある程度簡略化(=モデル化)して考えます。
例えば、床スラブは変形しない(=剛床仮定)とか、梁や柱は立体でなく線のように細い部材(=線材置換)として、交点の応力を計算するとか、コンクリートの柱と梁が交わる部分(接合部)は変形しない(=剛域)と考えるとか。

ちょっと想像を絶するかもしれませんが、60mを超える超高層ビルの最下層、建物の基礎部分に設ける梁のせいの高さは、3〜4mもあったりします。
それを1本の線として考えることは、構造設計者なら誰でも、割と当たり前のこととして行っていることなんです。
今世の中にある、いわゆる「一貫構造計算プログラム」と呼ばれるプログラムは、すべてそうだと言ってもいいでしょう。

まあ他にもこういった仮定は色々あるわけなんですが、例えば柱と梁と壁が入り組んで複雑な形状になってる部分を、どんな風にモデル化して計算するかというのは、構造設計者によって考え方が異なる場合も出てきます。
一方、プログラムで考慮できるモデル化の要素というのは、当然ながらプログラム毎にある程度限られます。設計者が「こういうモデル化の方が正しいはずだ」と思うモデル化が、できない場合も出てくるわけです。

非常に分かりやすい例を挙げます。

プログラムで計算した場合、柱には「力Aと力Bがかかる」と計算することになっています。
ここで、柱はCという力にまで耐えられるとします。
コンピューターの計算では、A+B≦Cであれば「OK」、A+B>Cであれば「NG(ノーグッド)」と判定されるわけです。
しかし、構造設計者は「この柱にはAという力はかかるが、Bという力はかからないと考えられる」と判断しました。
そこで、手計算でA≦Cであることを確認し、構造計算書には「OK」と書きました。

この例題は非常に簡単な例なので「それくらいならプログラム書き換えろや」と言われるかも知れませんが(^_^;)、実際の問題はもっと遙かに複雑で、いろんな要素があるのだと思ってください。

水落氏が「手計算で柱の断面が問題ないことを確認した」と主張しているのは、そういう意味合いのことを言ってるのだろうと思われます。

もちろん、それが水落氏のハッタリを効かせた言い逃れであり、京都府や国交省は既に偽装の確証をつかんでいるから自信満々で発表したのだという可能性もあるのですが、その論拠が示されてない今の段階では、構造設計者としては

「根拠となる計算の詳細を見てない以上、京都府や国交省が間違っているのか、それとも水落氏が嘘を付いているのか、今の段階では判断のつけようがない」

としか言えないのです。

お二人の疑問に対する答えに、少しでもなっていれば良いのですが……
説明不足の点などあれば、どうぞまたご遠慮なく言ってください。



(1/28 追記)

>でび

プログラムの限界と人間による補足の必要性については、ご理解の通り。
「悪意」については、これはあくまで私の個人的な意見ですが、今回は姉歯のときのような形での明確な「故意」あるいは「悪意」は、なかったのじゃないかと思っています。

少し別の話になりますが……

建築構造というのは、正直言って、解析モデルに乗ってこない様々な「計算外の余裕」を含んでいることは事実です。そうした計算外の余裕は、設計で予定していた力以上の力を建物が受けた場合に、建物を倒壊などの大きな被害から守ることになります。
一方で、構造計算の手法を複雑にして、答えを厳密に求めようとすればするほど、それは実際にはその建物の「余裕度」を減らしていることになります。その結果、想定外の大きな力を受けた場合に、「計算外の余裕」に踏み込んでいく可能性が高くなっていきます。
そして、その「計算外の余裕」が尽きた時、大きな被害を受けてしまう可能性も同時に高まっていると言えるでしょう。

もちろん、コスト削減や省資源などの観点から、こうした努力は決して否定されるべきものではありませんが、一方でそうした競争の「行きすぎ」が、今回の事件を招いたという見方もできる気がします。

私が思うに、最大の問題は、そうした事実が構造設計者以外の人たちに、あまり理解されていないのではないかということです。

建築主は本来、自分自身の生命や財産はもちろん、その建物を売ったり貸したりする場合には、そこに住むことになる人たちの生命や財産のことを意識して、建物を建てる必要があるはずです。
一方、以前にも述べたことですが、法律はあくまで最低基準を示しているだけです。しかもその最低基準は、決して「どんな地震や災害がきても壊れない」ことを保証しているわけではありません
ですから建築主は、自分の建物がどの程度の強さを持つべきかを、自分自身で考えていく必要があるのです。(もちろん、そのための判断材料を、構造設計者は建築主に理解できる言葉で語る義務を負っています)

少なくとも、構造躯体を少しでも安くあげようとする(それをプレッシャーとして構造設計者にかける)態度だけは、厳に慎めとまでは言いませんが、ほどほどにして欲しいものです。

ただし、その前提として、建築主と設計者とのコラボレーションにおける信頼関係が最も重要であることは、言うまでもありません。

話が少し横道に逸れましたが……

今回の騒動の背景には、建築の構造設計を巡る上記に述べたような風潮が、間違いなく存在すると思っています。
言ってみればそれは、「建築主が構造の安全性について意識していない=注意を払っていない」という、いわば「未必の悪意」とでも呼べるようなものではないでしょうか。



>aeternumさん

お住まいが水落氏設計の物件とのこと。以前のコメントでも、名前こそ挙がっていませんでしたが富山の一級建築士の設計物件であるとおっしゃっていましたね。ご心配、お察しします。
いろんな意味で、良い結果が出ることをお祈りします。

それはそれとしまして。

>国交省はバレンタインまでに119件の検証

その点については、私も「無理言ってらあ」という気がします。
特に物件の集中しているところでは単独の行政庁で70件以上の物件をチェックする必要があるとのこと。誰の手を使って、どこまでをどんな風にチェックするつもりか知りませんが、仮に行政庁の人間だけでそれだけのチェックをやろうとすれば大変な作業量ですし、知識や専門性といった面からも、無理が過ぎるのではないかと思います。



以下、aeternumさんの疑問点についてですが……



>1.水落氏とタムラ建築設計事務所はなぜ、資料の開示要求に応じないのか?

これについては、何かを申し上げようにも根拠のない憶測だけになってしまうので、コメントは差し控えたいと思います。



>2.以下の記事を比較すると

>巨大マンション建設中断 構造計算の検証できず
http://www.asahi.com/special/051118/TKY200611010316.html

>アパ、千葉のマンションも強度不足か 京都発覚の契機
http://www.asahi.com/national/update/0126/TKY200701260364.html

2番目のニュースについては、よく読んでいませんでした。こんなことを言っていたのですね。
 千葉県の検証では、4棟は強度が十分と判断されたが、残る1棟をめぐり、コンクリートの重さや梁(はり)の鉄筋量の算定に標準と異なる手法が多用されているとする県側と「学術的にも認められた手法」とする水落建築士の見解が対立した。

 このため、県側は日本建築防災協会の委員会に助言を依頼。関係者によると、委員会は県の考え方がより妥当とする意見でまとまったという。

 委員会の意見書は週明けにも正式に県に提出される見通し。県の考え方で再計算すると強度は基準の1を下回るため、県は強度不足と確定し、改修工事による是正を求める方針だ。

 水落建築士は26日の朝日新聞の取材に対して「最初から駄目なものをつくったとは言われたくない。お客さんに迷惑をかけるわけにはいかないので、自分なりの主張をしたうえで県の要望に応える」と話した。アパグループは「県の指導に従って改修を進めたい」としている。

委員会が出したという結論の、「(県の考え方が)より妥当」という表現が、この問題の複雑さを表しています。
つまり、「水落氏の言ってることも一応の筋は通っているが、そこまで安全性を落としたやり方は、設計者として一般的なやり方ではないんじゃないの」ということだと思います。

おそらくこの後、水落氏は何らかの形で責任を問われるかと思いますが、水落氏は「今さら一般的な手法でないだの強度不足だの騒ぐくらいだったら、そもそも何で最初に確認済証を降ろしたんだよ」と開き直るかもしれませんね。

それにしても、aeternumさんのおっしゃる「他物件の判定結果が影響しているのでは」という見方には脱帽します。一読しただけでは、私にはそこまで読みとれませんでしたが、うがった見方をすると(失礼)、
「京都で水落氏の設計物件にクロって判定してるから、うちもクロにしとこう」
というような判断が委員会や千葉県側で働いた可能性を、否定できないことに気づきました。
そんなことがないことを祈りたいです。

そもそも論をいえば、問題とされている千葉の物件も、5棟のうち1棟が問題になっているとのことです。そのすべてが水落氏の設計であるとのことですが、これらが同時期に設計されたものだとすると、今回問題になった1棟のみが異なる手法(記事中で言う「標準と異なる手法」)で設計されたとは考えにくい気がします。

であれば、「別の(一般的な)手法で計算してみたらOKだったから残り4棟はOK」というのは、逆に筋が通らない気がします。
この4棟について法的に問題ないと認めるのであれば、残る1棟についても構造設計者の責任は問われないはずです。(ひょっとしたら、京都の物件の件とは切り離してそういうことになるのかもしれませんが、こうして扱われること自体、あたかも「千葉の物件についても水落氏は有罪」という印象を助長することになる気がします)



>3.公的な再確認の結果すら二転三転する

おっしゃることは、まったくごもっともだと思います。
前の判断を翻すと言うことは、つまり「前の段階では中身をきちんと見ていなかった」というに等しいことであり、こうしたことを役所が軽々しくすべきではないと思います。まして今回のような騒動の場合、そもそも確認検査の時点で一度決定的に「見逃して」いるのですから、なおさら慎重を期してもらいたいものです。

以前にも述べたことですが、この問題は技術的な問題=「足りてるかどうか」と、法的な問題=「(悪意のある)法律違反かどうか」とは、明確に分けて論じるべきだと思っています。
技術的な問題についてだけ言えば、これら新築の物件よりも早急に手を付けるべき旧基準による中古マンションが、大量に残っているのですから。

asahi.comより『マンション、進まぬ耐震診断・改修』
http://www.asahi.com/special/051118/OSK200701060082.html



以上、全然まとまっていませんが、いずれにせよ、今回の問題が早急かつ平穏に収束することを願っています。

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
そもそも論:プログラムは道具に過ぎない
何を今さら、と言われるかも知れませんが、細かい説明に終始し、根本的なところの説明が抜けていたので。 ...続きを見る
ブロ愚 〜おろか日記 blog styl...
2007/01/30 21:25

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(29件)

内 容 ニックネーム/日時
要するにコンプータは人間の作業をなぞるだけで、どこまで複雑になぞれるかには限界があると。だから、その限界を超えてる部分については人間様のプロの修正が必要な場合もあると、まぁこういうことですな? AとBの力の問題でも論理的に競合ありえないかをコンプータにおっかけさせることは難しいと。
できても、最大安全石橋をストライキングで結果だすようにしてて、あとは使う人の自己責任というあたりですか。

・・・たぶん、どっちもウソはついてない。あとは悪意の有無と所在の問題じゃねーかとおもふ
でびぃ
2007/01/27 23:27
昨年の6月頃、こちらでいろいろと疑問にお答え頂きましたaeternumです。
その節はありがとうございました。

私の住んでいる住居も、水落氏の設計です。
昨年6月以降、国土交通省と売り主による確認作業が行われてきましたが、
タムラ建築設計事務所が資料の開示要求に応じない状態が続き、
まだ調査中となっていました。
今回の件で、国交省から特定行政庁に調査の指示が出たことで、
住民側の協力によって資料を用意できる運びとなりましたので、
半年もたてばいずれ結果が出てくるのではないかと思います。
それまでの日々は、地獄のように辛いと思いますが。
(富山県に対しては、国交省はバレンタインまでに119件の検証結果を
命じているようですが、あまりにも無理の有る非現実的な話と思います。
建築行政の元締めでプロであるはずの国交省がなぜ不可能と分かる要求を
突きつけているのか、疑問です。
http://www.asahi.com/special/051118/TKY200701260254.html)
aeternum
2007/01/28 02:46
Radcliffe様の見解については全て、私も全く同様に感じています。
相変わらずネット上の世論では、構造計算の本質から外れて政治的な
話につなげたり、アパへの非難ありきの論調、怪しげな考えばかりで
うんざりしていますが、
こちらのブログでは専門家による冷静な視点からの分析と
なっておりましたので、コメントさせて頂きました。

私自身は、以下の点について強く疑問、不安に思っています。

1.水落氏とタムラ建築設計事務所はなぜ、資料の開示要求に応じないのか?
構造計算手法、モデルの立て方に構造設計者の裁量があることは分かるが、
その根拠や必要な資料は速やかに提示するべき。
強度の実態とは無関係の話だが、考え方を逐一記録に残して検証可能と
しておくことは技術者の基本。
紛失したのであれば管理不備がひどいと思うし、他に理由があるなら
正直に述べて、調査の妨げとならないように振舞うべき。
資料を提示しないのでは「京都府と国交省から誤解を受ける」のもある意味
やむを得ない話ですが、これに住民が巻き込まれるのでは、たまりません。
aeternum
2007/01/28 02:48
2.以下の記事を比較すると、2006年11月以来検討中の問題に対し週明けに
突然答が出るようで、京都府の調査結果が他の調査物件に対する判定に
影響しているように思えます。
http://www.asahi.com/special/051118/TKY200611010316.html
http://www.asahi.com/national/update/0126/TKY200701260364.html
本来、各物件に対する判断は互いに独立であるべきで、
純粋に技術的観点から結論を出すべきと思います。
ある物件に対する判断が他に波及したり、
一時の世論で判断が急に決するとしたら、
その源となった判断、世論に誤りがあった場合に取り返しがつきません。
aeternum
2007/01/28 02:49
3.本ブログで再三取り上げられていたように、公的な再確認の結果すら
二転三転することがままあり、このようなぶれの大きい判断によって
個人資産が簡単に無に帰することに恐怖を感じています。
例えば姉歯氏による最初の偽装物件では、保有水平耐力が43%しかなかった
にも関わらず、中央区はこれを当初、適正で偽装無しと判断していました。
http://www.zephyr.co.jp/ir/img/press_180607.pdf
http://www.zephyr.co.jp/ir/img/press_180714.pdf
この逆に、偽装で耐震性不足と判断された物件が後に問題無しとされた例も、
Radcliffe様が過去に示されていたと思います。
aeternum
2007/01/28 02:50
結局のところは、技術的な正当性よりむしろお国の、
つまり特定行政庁の判断こそが正しい、
という前提でことは処理されるだろうと考えてはいます。
しかし結果によっては割り切れない思いは残り、信頼性の薄い判断の下に
人生を棒に振ったり、人生をあきらめざるをえなくなたり、
命を左右されるのでは、正直なところたまらないという思いです。

その他、既に手遅れの問題ですが、タムラのHPでは相変わらず
富山の物件を含めた担当物件名を晒したままとなっています。
タムラの対応がこれでは、富山県が調査前の現段階での物件名の公表を
差し控えている意味がありません。
こんなところにも、タムラの杜撰さの一部が現れているように感じます。

以上、毎回の大量コメント、申し訳ありません。
aeternum
2007/01/28 02:51
>でび
プログラムの限界と人間による補足の必要性については、ご理解の通り。
その他については、本文に追記します。

>aeternumさん
お久しぶりです。その節は色々とご質問下さりありがとうございました。
おかげさまで、私も色々と考えるところが多く、勉強させてもらう機会となりました。
今回も、レスは本文に追記させていただきます。
Radcliffe
2007/01/28 13:10
>>1.水落氏とタムラ建築設計事務所はなぜ、資料の開示要求に応じないのか?
>これについては、何かを申し上げようにも根拠のない憶測だけになってしまうので、
>コメントは差し控えたいと思います。

設計士に話を聞きましたが、サンプル調査の物件数の多さが理由のようです。
物件毎に順次資料は出しているが、全て出すにはどうしても時間がかかる。
既に調査済となっている物件分に、既に提出した資料に対応する物件分が含まれている、ということのようです。
aeternum
2007/01/28 20:58
>2.以下の記事を比較すると
何ヶ月もずっとグレーのままとなっていた問題に対し、
京都の件が公開されると即座に白黒ついた点に、相関性への疑問を感じます。

報道、国交省の発表では通常、最終的な結果しか公開されません。
しかし、問題の本質が技術的な問題にある点を考えると、
疑問を氷解できるだけのより詳細な説明も必要と感じます。
例えば、判定根拠についてRadcliffeさんが論理的にトレースできる
レベルでの専門家向けの発表、
具体的、定量的な説明および、設計士の見解とこれに対する確認者側からの
反証を伴う詳細な発表も必要と感じます。
aeternum
2007/01/28 20:59
>3.公的な再確認の結果すら二転三転する
同じ見逃しを何度も繰り返すのは、チェック項目に抜けがあって、
この抜けを次から埋めるフィードバック作業ができていない
ということのはずです。

確認機関の言い分としては、全てをチェックすることはコスト上できない
ということのようですが、であればチェックできない領域について
どう対処すべきか、方針を決める必要があると思います。

例えば、以下の選択肢があると思います。
1.従来通り詳細チェックはあきらめ、設計士の良心を信じる
2.定期的にサンプルチェックのみかけて設計士に警戒感をもたせる
3.コストをかけて全数チェック
現状はなし崩し的に1.のままとなっているように思えますが、
いずれを選ぶにせよ本来は十分な議論が必要なはずと思います。

個人的には、現実的な最善解は2.、ただし偶然サンプルチェックで
ひっかかった不幸な被害者への対策として、
合わせて問題が検出された場合への保険を設立する、
あたりが妥当かと思います。
aeternum
2007/01/28 21:01
>いずれにせよ、今回の問題が早急かつ平穏に収束することを願っています。
私も同じ思いですが、残念ながらRadcliffeさんもご指摘された通り、
早急な収束はありえないですよね?
1件当たり、短くても半年程度のチェック時間が必要で、
これを100件以上やる訳ですから、
パラレルにチェックを走らせてもチェックだけでも後1年以上は
かかるように思えます。
チェックはパラレルにできても、チェック側で不明点が出たときの
設計士対応は水落氏一人にしかできず、シリアルでしか対応できない
のですから、もっと時間はかかる可能性も高いでしょう。
これが、資料開示の遅さにもつながっているようで、
再度、国交省、売り主、住民をいらつかせる経過をたどることは
避けようがないと思われます。

もしこのチェック時間が早まるなら、それは省略されたチェックが
あって、またチェックに抜けがありえることを意味するのだろうと思います。
aeternum
2007/01/28 21:03
>aeternumさん
コメントありがとうございます。
1.の件については情報ありがとうございました。
2.の点については、より詳細な情報が公開されるべき、という点で同意します。もっとも、私がそれを見たからといって、自分が納得する以上のことはできないですし、仮に誰かに白黒の判断を求められたとしても、とてもその重責は負えません(^_^;)。学識経験者の方々の判断に委ねたいところです。
3.の問題については、実は既に法改正が進んでいて、一定以上の規模の建物(例えばRC造の場合は高さ20m超)の場合は、確認審査とは別に「構造計算適合性判定機関」において構造計算に関する審査を受けることが義務づけられることになっています。
判定員は構造の実務経験者等から選ばれることになっていますが、いかんせん構造設計経験者のパイは限られており、その中から新たにこうした内容の責務を負わせることは、引いては構造設計者の負担を単純に増やすことになるのが懸念されるところです。
Radcliffe
2007/01/28 22:23
最後の「収束」に関する話については、まったく恐縮です。
早急かつ穏便に収束することが望ましくはありますが、おっしゃる通り、慎重な検討が必要な事柄であり、確かに難しいですね。
Radcliffe
2007/01/28 22:26
Radcliffe様、ご回答ありがとうございます。

2.についてですが、情報が公開されている方がマルチチェックが
多重にかかりやすいと考えましたが、
その一方で、設計士の考え方の裁量が大きいと、受け止め方の開きが
大きくてかえって混乱を招いてしまう弊害もありえますね。

情報公開のメリットとしては、設計士一般に対してはあるかと思います。
公開された詳細な判断基準をリファレンスとすることで、
国の判断基準が具体例で明確化されるので、
設計士がグレーゾーンを回避して今回のように思わぬ訴えにあうことを
予防できること、です。
デメリットとしては、設計士の裁量が狭くなることで構造が画一化されて、
創造力を発揮する余地が小さくなることが考えられますが、
住民の立場としては今回のようなリスクを今後回避するためには
それもやむを得なしか、と思います。
aeternum
2007/01/28 23:32
>aeternumさん
構造の画一化と想像力発揮の余地の縮小に関しては、まさにそういったことを懸念する発言を繰り返しておられる大学教授もおられます(私の恩師の一人ですが)。
短期的には「やむなし」との考えが趨勢を占めることになるかもしれませんが、一方で基準の厳格化・明確化は「その通りにやりさえすればいい」という発想、すなわち構造設計者自身の発想の貧困化や努力の放棄、ひいては構造設計の発展の停滞を招く恐れも高く、長期的な観点から見ると必ずしも望ましくないのではないかと考えます。
Radcliffe
2007/01/29 00:22
うーん、良くわかんないんだけど、こういうことかな?

(1) 構造設計で使用されるべき各種数値には、こうでなければならないという明確な基準が存在せず(もしくは複数あって)、設計者がそれを、『本人が妥当と考える範囲で』選択できる

(2) 構造設計の分野では、強度とコストとはトレードオフであり、コストダウン圧力が強いため、どれだけ「妥当に強度=コストを削るか」が設計者の腕の見せ所である

(3) 強度の確認に用いられるプログラムやその初期条件は、かなりの割合で適用できない建物がある。こういう建物に対しては、この計算結果は目安にしかならない。

だから、計算結果の初期条件その他に多少の問題があっても、それは必ずしも「強度不足」を確定的に意味するものではない(かも知れない)。
thalion
2007/01/29 17:30
>さり
(1):「各種」というのは「すべての」ではありませんが、「一部の」という意味で言えばそうです。

(2):ちょっとだけ補足。
「……腕の見せ所である、と考える施主や意匠設計者は多く、力関係の影響でそう考えることが習い性になった構造設計者も決して少なくない」
思ったんだけど、これは以前mash/pipechair氏が日記で書いてた「無理難題を前にすると、返って悪いやる気が出てしまう」というのと一緒かもしれない。

(3):「かなりの割合」とまでは言えませんが、「そういった例もある」くらいで理解していただければ。

話は少し違いますが、実際問題として、一貫計算プログラムには載ってこない(=プログラム上の計算だけでは安全性が確認できない)建物の各部の部材(「二次部材」と呼ばれる床スラブ、小梁、間柱などの部材)もあるので、そういう部分は手計算(あるいはそれに類する計算ツール)に頼っているのが実情です。
Radcliffe
2007/01/29 19:50
ご回答ありがとうございます。
途中で家族会議となりましたが続きを投稿致します。

>3.の問題について
件の建築士もRCの問題に触れていたので、
前から疑問だった点をお伺い致します。

従来SRCで建てられていた15階程度のマンションが、
ここ数年は(H)RCで建てられているようです。
その理由は中国需要による鉄骨の価格高と、コンクリートの高強度化
と思います。
高コストでも伝統的なSRCの方が安心感あるように思えますが、
HRCとSRCは強度的に同等と考えられるのでしょうか?

素人考えでは、引張強度が特長の鉄筋と圧縮強度が特長のコンクリートでは
性質が違い、コンクリートの強度を高めても鉄骨の代用には
ならない気がします。
ですが15階以上でもRCが一般的な現状を見ると、
相応の理由あってのこととも思えます。

問題の若葉駅前物件もRCで、件の建築士からは
高強度コンクリートをSRC構造相当規模の建物に適用する際の
考え方の違いが、再検査での見解相違の一つと伺いました。
RCの使用は専門家でも見解が別れる微妙な問題を含むのでしょうか?
aeternum
2007/01/30 00:59
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070125-00000149-jij-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070129-00000044-kyt-l26
京都市が71%とした物件が水落氏では126%、
そしてアパが別の設計士に計算させた改修図面は120%で、
これは京都市、水落計算では各何%か?

やはり計算過程がBlack Boxでは何がなんやらです。
結局市の結果が正義とされるでしょうが、
実態は所詮、担当者の胸先三寸に思えます。
コスト感覚0で全変数を厳しく見積もり、
後ろ指さされない結果を出すと思います。

正直、私は自分の物件の耐震強度は心配していません。
立地、環境、人間関係共この上なく気に入っているので、住み続けたいです。
それでも市は、世論に従い強度不足の結果を恣意的に出すと
邪推してしまいます。
物件の耐力より売り主の体力と、体力不足時の家族の生活、命が心配です。
そんな心配なら気に入った物件でも
手放すべきか等心配尽きず疲れ果てました。
aeternum
2007/01/30 01:42
>aeternumさん
一般的に言って、超高強度RC造とSRC造の単純比較というのは難しい問題ではありますが、同じクライテリアで設計された建物は、基本的に同じ性能と考えて良いと思います。

>引張強度が特長の鉄筋と圧縮強度が特長のコンクリート
>では性質が違い
その点は正におっしゃる通りで、SRC造にせよRC造にせよ、「引張に弱い」というコンクリートの欠点を、引張にも強い鉄で補っています。
一方で鉄は「比重が重い」「重量当たりの値段が高い」などの理由から極力少ない量で設計されます(例えば鉄骨ムクの断面で設計することは効率が悪いので、鉄骨造なら中空の鋼管にしたりH型を使ったりして、RC造なら鉄筋を利用します)が、一方で細長い断面や薄板状の断面は「座屈」と言って、圧縮力に対しては引張強度よりも弱い力で降伏する場合があります。これをコンクリートで包むことで、そのような鉄の欠点を補っています。
つまり、RC造もSRC造も、鉄とコンクリートが互いの欠点を補い合うという点では同じ思想の元に考えられた構造形式と言えるでしょう。
Radcliffe
2007/01/30 12:02
(続き)ここで建物の構造設計に関して言うと、高さや階数、総重量等の条件が同じで、使用する鉄の強度も同じであれば、同じ程度の安全性を満たすために必要な鉄の量もほぼ同じだと考えても、それほど大きな間違いではないと思います。

そうすると、SRCとRC、どちらを選択するかは、「価格」の問題になってきます。
鉄骨と鉄筋を比べると、鉄骨の方が高いのですが、これは材料単価の差以上に、加工費や運搬費がかさむことが大きな要因を占めています。
鉄骨は工場で専門の資格を持った溶接工が溶接し、3階分くらいの柱と、それにくっついた梁の端部とが組み合わさった「キ」の字状のものにしてから(最近は柱だけで運んでくる場合もありますが)、鉄骨の溶接工場から運んでくる必要があります。それを、高力ボルトと呼ばれるボルトでつないだり、あるいは現場で溶接したりして、架構の形を組み上げなくてはなりません。
しかし鉄筋は、ばらばらの状態で持ってきて、定められた長さを確保して重ね合わせたり、機械式継手と呼ばれるジョイントを介してつないだりすることで組み立てることができるので、加工手間が少なく、結果として安く作れるのです。
Radcliffe
2007/01/30 12:10
(続き)再検査に関する見解の相違というところについてはちょっと分かりかねるのですが、SRCとRCとの一般的な話としては、上記のようなことになると思います。

建物強度の話については、最後の数値だけが一人歩きしてしまっている現状に、大変危惧を覚えています。危機感を煽るだけでは何の意味もなく、むしろ悪影響ばかりが出てしまいます。
水落氏は早くから学識経験者による第三者チェックを主張していますが、その流れが早急に実現することを願うばかりです。

とはいえ、一部の人たちが要求しているように、水落氏側から一般向けに情報を開示するのは、守秘義務などが絡んで難しい面もあるのではないかと思います。また、この状況を裁判にたとえるなら、水落「容疑者」に「犯罪行為がある」と「告訴」したのは国であり京都市なのですから、この場合それを立証する責任は「訴えた」側である国や京都市にあると思います。
なので、国や京都市は早急に信頼できる第三者によるチェック(第三者から水落氏への意見聴取を含む)を実行できる環境を整えるべきだと考えます。
Radcliffe
2007/01/30 12:28
(続き)
最後になりますが、ご心痛いかばかりかとお察しします。
どうぞ、ご無理だけはなさいませんように。
(他に言葉が見あたりません……申し訳ありません)
Radcliffe
2007/01/30 12:33
Radcliffe様、丁寧なご回答をありがとうございました。
私の物件はSRCで、建築中も度々現場を見学していましたが、
巨大な鉄骨が組み上げられていく姿が印象的でした。
でも当然ながら、SRCかRCかだけで強度を云々などできませんね。

保有水平耐力については、偏差値と同じような理由から、定量的で客観的な
指標として受けがいいのだろうと思います。
ですが、母集団が明らかにならなければ偏差値に意味がないのと同様に、
保有水平耐力もその導出過程、前提条件が見えないと「数値だけが一人歩き」
してしまうのだと思います。

第三者によるチェックについて、第三者といえど国家資格で生計を
立てている以上、現状の「反論は許さない」という京都市、国交省の
姿勢の下ではバイアスのかからない評価ができるのか、疑問があります。
これは、先にご紹介した朝日による千葉物件の報道と同様の疑問です。
朝日は私のマンションでも取材に来ていましたが、ここでも取材時の条件を
守らずに報道されてしまい、不信感をもっています。
aeternum
2007/01/30 23:25
報道の話では以下のブログが興味深いです。
姉歯事件でひどい攻撃を受けていたブログで、1年前にコメントを閉鎖するよう提案したら、私もコメントできなくなってしまいました(^^;
http://gskay.exblog.jp/
「危機管理の教訓」
ブログ内容全般には賛成できる点、できない点ありますが、アパの報道対応への分析には感心しました。まず国の指導下で商売する以上国に逆らってはいけない、次に問題発生初期には自らの責任・過失を認めてはいけない、しかし役所・マスコミが動いた後は態度を翻して謝り、論理的な対応をしてはならない。特にマスコミからは同情を誘うことが重要で、泣きの見せ場を提供できるパフォーマーでなくてはならない。
aeternum
2007/01/30 23:58
水落建築士は、技術者・設計者である以上当然に論理的に反論するし、パフォーマーには全くなれていない。だからマスコミからの好意的な対応は得られない。彼自身は裁判も辞さない覚悟のようですが、世間は表層で全てを判断するので、彼の主張は世の中からは理解されないでしょう。先の私の主張とは矛盾しますが、だから構造設計という行為は、マスコミの報道対象となる表舞台に出してはならない世界だと感じます。私はこれで良いとは思いませんが、世の中を支配するのは国とマスコミである以上、絶対に彼らに逆らってはならない、ということを身をもって感じます。

>最後になりますが
丁寧な回答とお気遣いを頂き、ありがとうございます。
説明を頂き、こうしてコメントさせて頂くだけでも、幾許か心が落ち着きます。
aeternum
2007/01/31 00:01
>aeternumさん
>こうしてコメントさせて頂くだけでも
そう言っていただけると、こちらとしても少しは気が休まります。

SRCとRCについては、感覚的にSRCの方が「何となく安心感がある」という気持ちは、私もよく分かります(^_^;)。ただ、実際の話で考えると、そういった問題よりもむしろ個々の建物の設計手法は妥当か、施工に問題がなかったか、といった部分でのばらつきの方が、圧倒的に大きいでしょうね。

>導出過程、前提条件が見えないと「数値だけが一人歩き」
まったくおっしゃる通りでしょうね。問題は、プロであるはずの国交省の役人が、そのことを理解していない(少なくともそのように思える)という点です。姉歯の件で数値が一人歩きし、後から一部の結論を訂正するハメになったことから、学習していないんでしょうか。
Radcliffe
2007/01/31 08:11
(続き)
>第三者
私が考えたのは、どちらかというと大学教授中心で構成された、現状では超高層建物の評定などで行われる委員会のようなスタイルを想像していました。サポートとして一部実務的な計算の検証は実務者が行う必要があると思いますが、それなら役所の強硬姿勢に対してもきちんと発言できるでしょうし、一般の人たちに対しても説得力を持つと思ったからです。
私が懸念するのは、これだけ騒ぎになった件の、いわば「弁護」を引き受けてくれる先生がおられるかどうかということの方ですが……

御紹介のブログについては、姉歯の件が騒がしい頃私も拝見したことがあります。最近はまめに読んではいませんでしたが、今回のことで久しぶりに訪れ、その分析も拝見しました。パフォーマンスに関しては、皮肉の効いた言説ではありますが、シャレになっていないところが心底恐ろしいと思います。
Radcliffe
2007/01/31 08:21
(続き)
構造設計に関しては、確かに一般の方から見てブラックボックス的なところがあり、構造設計者自身もこれまで積極的には説明してこなかったところもあると思います。我々にとっては不幸なことに、悪い面から表に出てしまったため、そういった印象を持たれるのかもしれません。
しかし、一度表に出た以上は、少しでも多くの皆さんに我々の仕事を理解していただくための努力をたゆまず続けていくしかないのだと思います。失った信頼を取り戻すのに時間はかかりますが、そうでなくては日本から構造設計者はいなくなってしまうでしょう。一企業の問題であれば企業がつぶれておしまいかもしれませんが、日本の構造設計者全員がつぶれることなど、あってはならないと思います。
Radcliffe
2007/01/31 08:21

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
ブログパーツ