asahi.comより『アパホテル2棟、荷重を基準値の半分で算出 京都市調べ』耐震強度不足が発覚した京都市にあるアパグループのホテル2棟の構造計算書で、建物の床などにかかる力を示す「積載荷重」を、建築基準法施行令で目安にしている数値の半分程度で算出していたことが、京都市の調べでわかった。荷重が軽ければ床や柱に使う資材を減らすことができ、コスト削減につながるという。 「積載荷重」に関する説明をここでやり始めると長くなるので、これについてはまず下記のリンク先を参照してください。 『荷重』- 積載荷重 建物にはどれくらいの荷重を載せられるのでしょうか。 (日本建築構造技術者協会サイトより) 要点を短く言うと、「積載荷重」には「床用」「柱・梁用」「地震用」という3種類の数値があり、荷重を平均化する時の面積の取り方に応じて、異なる数値を用いて良いというのが、構造設計上の約束になっているということです。 自宅の部屋の中を想像してみてください。 例えば、リビングの中で、大きな本棚の並んでいる壁際と、テーブルなどが置かれた中央部とでは、そのあたりにあるものの重さの合計が、明らかに違うことが想像できると思います。 本棚の重さを考えて床を設計しておかないと、床は抜けてしまうかもしれません。 でも、リビング全体に本棚が敷き詰めてあるわけではありませんから、地震の時にそこまでの重さを考えて設計するのは「やりすぎ」でしょう。 難しい話をすると、重さを大きめに見積もっておけば必ずしも安全かというと、実は色々な条件が重なってそうならないこともあるのですが、その話をするとまた長くなりますし、ここでは必要ないと思うので割愛します。 で、積載荷重の話に戻りますが、これには法律上に目安となる数値が定められています。 例えばホテルの場合、上記の記事中にも書いてある通り、住宅の居室などと同等の数値を 床 用:1800 N/u(約180kg/u) 柱・梁用:1300 N/u(約130kg/u) 地震用: 600 N/u(約 60kg/u) で、上の記事を読まれた方は、「水落氏はその数値を使っていなかったのだから法律違反で、これは明らかにクロなんじゃないか」と思われるかもしれませんが、それがそうとも言い切れないのです。 なぜかというと、アサヒコムの記事の中にも書いてありますが、この数値はあくまで「目安」だからです。 「目安」ということは、「それと異なる数値を使っても良い」ということになります。 たとえば、実況に応じて定める(=実際に置かれるものの重量をひとつひとつ合計して考慮する)場合がそうですし、学会など信頼のおける機関等が出した出版物等の数値も、根拠が明確であれば使用することが禁じられているわけではありません。 法律でこの積載荷重の数値を「厳守すべき数値」として定めていないことには、法律の改正が追いつかない部分に対して、設計者の自由度(たとえば実況に基づいて定めた数値を使用するとか、最近の研究成果を元にするとか)を妨げないことが大きな目的としてあるので、これは仕方がないというよりも、むしろ「そうでなくてはならない」ことと言って良いと思います。 ここで、水落氏の説明に出てきた「学会の指針を使った」という言葉ですが、これはおそらく日本建築学会から出版されている「建築物荷重指針・同解説」のことであろうと思います。 学会の指針類は、学問の進歩や時代の変化に応じて時折改訂されるので、最新版の指針がどうなっているのか資料が手元にないので今は分かりませんが、少なくともその1993年版の指針には、ホテルなどに対する積載荷重として、床用:100kg/u、柱・梁用:60kg/uという目安の数値が掲載されている、ということのようです。 (「ようです」というのは、これまた手元に資料がないので、正確なところが分からないんです(^_^;)……会社には資料があるはずなので、週明けに確認してみようと思います) 一般の住宅とホテルの部屋とを、比べながら思い浮かべてみてください。 一般の住宅は、生活に必要なすべてのものが存在しますが、ホテルはあくまで仮の宿ですから、家具も少ないし、自宅より広々としている印象があると思います。 実際、学会の指針に示された数値は、基本的に多くの統計結果を元に出されている数値なので、十分な根拠がある数値と言えるでしょう。 であるとすれば、ここで明らかになっている事実は水落氏をクロと断定できる類のものではないということになります。 計算書の中に根拠が明示されていなかったというのは、確かに書類上の不備ではあるかもしれませんが、強弁しようと思えば「いやしくも役所で建築の構造審査を担当する者なら、学会の指針の中身ぐらい常識として知ってるのが当然だろう」と言い切ることもできてしまうのですから。 もちろん、京都市や国交省が水落氏の計算書を「偽装」と断じた理由が、これですべてというわけではないだろうと思いますが。 さらなる情報公開を待ちたいと思います。 ここからは、ちょっとだけ余談。 安全率を削るのは、何かにつけコワイですから。 (1/29 訂正) 下に追記した内容ですが、「ユニットバスや間仕切り壁などを別にきちんと評価する」ということを含め、「荷重指針」に書かれている内容を理解し、その手法を踏襲しているという条件であれば、この方法は問題ありません。十分に「アリ」です。 この点については、むしろ私の方が不勉強でした。失礼しました。 ただ、「事業」として建築を作る上では、「コスト削減」は常に命題として掲げられますから、姉歯のような確信犯は論外としても、法に抵触しない範囲でギリギリ切り詰めた設計をやるってことは、むしろ当然のごとく行われているのが、実情ではあるのです。 かなり以前にも言ったと思いますが、法律はあくまで「最低基準」を定めているだけなので、そのギリギリを狙うってことが構造設計者の倫理として正しいのか、という問題は、常に頭に置くべきだと私自身は思っています。 ただ、そういうきれいごとだけで動く世の中ではないんですよね……建築の世界に限らず。 (1/29 追記) コメント欄に書いたことですが、一部加筆の上、本文に追記しておきます。 またそれに応じて、上記の本文も一部訂正しました。 上記に関し、「建築物荷重指針・同解説」を調べてみました。 付表に、積載荷重の略算値として、ホテルの客室(ユニットバスを含まない)の場合、 床用:100kg/平米 大梁・柱・基礎用:60kg/平米 と明記してあります。 ただし、ここで注意すべきは、荷重の評価に「ユニットバスを含まない」と明記してあることです。また、説明を読んでいくと、客室間を仕切る間仕切り壁の重量についても積載荷重には含まない形で評価してあることが書いてありました。 したがって、水落氏が行った荷重評価のうち、間仕切り壁やユニットバスを積載荷重とは別に評価してあれば、大きな問題はないと思われます。 基準法における目安の数値を使う場合でも、ユニットバスの重量や間仕切り壁の重量を積載荷重に含めて評価するか、それとも含まないで別に(固定荷重として)評価するかは、設計者によって判断がまちまちになるところです。 もちろん、基準法の数値を使った上で、それらの荷重も別に評価するというのが一番安全側の評価ではあるのですが、そこまでやらない例も割と多いのが実情ではないかと思います。 ここで仮に、 1.基準法の積載荷重の数値を使用、ただしユニットバスや間仕切りも含むとして評価 2.荷重指針の積載荷重の略算値を使用、ただしユニットバスや間仕切りは別に評価 の2ケースを比較すると、両者の間に大きな差は出ないと言って良いと思います。 少なくとも、マスコミの記事を読んで得られるような「倍半分の差」という印象からは、ほど遠い差でしょう。 ただし、くどいようですが、これはあくまで「ユニットバスや間仕切り壁の荷重が別途きちんと評価されている」という前提に立ったときの話です。 逆にそれがなかった場合、これは計算として不備であると明言することができるでしょう(それが故意か、それとも知識不足からくる設計ミスなのかは、また別問題ですが)。 ただ、わざわざ学会の「荷重指針」を引き合いに出して主張するほどですから、そう簡単に不備が露見するようなずさんなことをやっているとは、いささか考えにくくはありますが…… (むしろ、それなりに勉強してないと、そんな主張を展開することすらできないはずなので) |
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ブロ愚 〜おろか日記 blog styl... 2007/01/27 22:46 |
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ブロ愚 〜おろか日記 blog styl... 2007/02/13 00:11 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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上記に関し、「建築物荷重指針・同解説」を調べてみました。 |
Radcliffe 2007/01/29 20:15 |
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